「白痴」を読む(43)

第4部、第5章

この章は、ムィシキン公爵を巡る、2つの異なった部分が接ぎ木されている

そうしておいて、終末/大団円へ向かって、繋ぎであって、加速する部分でしょう

そうした結末へ向かっての、木に竹を接いだような、積み石の1段ですけれど、単なる繋ぎに終わらないのが、ドストエフスキーの書くものの、ものすごさです

1つ/木の部分は、アグラーヤがムィシキン公爵にメロメロになって、結婚(?)を迫るという場面で

こうしたアグラーヤvsナスターシャといった三角関係を敢えて作ったのは

主人公の1人/ナスターシャを、よりよく表現するために、対照となる人物/アグラーヤを必要とした、からでしょう

ひとえに、アグラーヤはナスターシャの引き立て役にする為でしょう ← 真の主役はナスターシャであり、もう1人の主役のムィシキン公爵は、次の接いだ竹の部分で表現されている

この場面/木の部分は、第4部第1章の目論見が、つまり設計図/補助線が、上手く使われていて、その目論見/布石が有効であったことが、よく解る

劇画的に書かれていて、現実では慎みを持って隠されていること/現実ではありえないようなことを、文学上では言葉の説得力でもって、納得されるように書かれている

つまり、ペロコンスカヤ夫人/世間の評判では、公爵にはナスターシャという愛人がいること

又、財産について、アグラーヤに露骨に、父親/エバンチン将軍が辟易するほど、質問させている

2つ/竹の部分は、イッポリートとの対話で、ムィシキンはキリスト公爵として構想されたそうですが、そんな全知全能の力はなくて、ナスターシャに対しても、イッポリートに対しても、無力でしかないことが、対話の最後の部分で表されている

「ひとつあなたの口から教えてください。どう思いますか、ぼくはどんな死に方をするのが一番いいのでしょうか?

・・・せめてなるべくその・・・いわゆる気高い感じを出すには? ねえ、教えてくださいよ!」

「どうかぼくたちの脇を通りすぎて、そしてぼくたちの幸せを許してください!」静かな声で公爵は言った。